不惑オヤジ(と娘)の将棋な日々

アラフォー親父と小学生娘の悪戦苦闘の記録

[棋譜並べ]柳原長吉vs天野宗歩(四枚落ち) 1853/01/27

※この棋譜並べシリーズは棋力初段レベルのブログ主が、自身の学習のアウトプットとして書いているものです。解説とかではない旨をご承知の上で、お読みください。

今回取り上げるのは、1853年1月27日に行われた、柳原長吉vs天野宗歩の四枚落ち戦です。

今回から、私なりに大局観的視点を意識して棋譜を眺めてみようと思ってますが、そもそも駒落ち戦の場合、最初から上手と下手には戦力差という明確な違いがあります。よって、ある意味初形の時点で、上手および下手が取り得る戦略の方向性というものがある程度決まってくるのではないかと考えてます。

初形の時点で、上手は駒損しているわけですから、形勢判断のセオリーに従えば基本的には急いで攻めたいはず。しかし、本譜のような四枚落ちのレベルだと、大駒が無いため早い攻めというのが物理的に難しい。よって、次善の策として、「全ての駒をまんべんなく活用するため、なるべく下手の攻めを遅らせて時間を稼ぐ」というのが基本戦略になるのかなぁ、と思います。ただでさえ戦力差があるのだから、せめて現有戦力を最大限に活かして抵抗しよう、ということですね。

これを下手の視点から考えれば、初形状態での駒得にものを言わせ、(1)「ゆっくりした流れにして駒得が活きる展開にする」のがまずひとつ。しかしそれは、上手にとってもある意味望むところなので、もうひとつの選択として、上手の戦力不足を咎め、(2)「上手に駒を活用する余裕も与えない速攻で食い破る」という路線も出るでしょう。

六枚落ちおよび四枚落ちの定跡は(2)であることが多いですね。二枚落ちくらいになると、さすがに戦力差で簡単に押し切れるほど単純では無くなるので、定跡も(1)のタイプになっているように思います。

本譜も、下手は居玉のまま速攻を仕掛けました。

△6二金 ▲1六歩 △7四歩 ▲1五歩 △3二金 ▲1八飛
△2四歩 ▲1四歩 △2三金 ▲1三歩成 △同 金 ▲2六歩
△1四歩 ▲2八飛 △2三金 ▲3八銀 △2二銀 ▲2七銀
△3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲3六銀 △3三桂 ▲1七桂
△4四歩

2018-08-28a.png

この歩突き、▲同角でタダですし、本譜もそう進むのですが、なぜこんなタダで取られる歩を突いたのでしょうか。

想像ですが、あえて角で取らせることで一手稼いだのかなと。

本来なら、△5三金とでもしてから△4四歩としたいところだと思います。ただ、そうすると、下手が本譜と同じように攻めてくると仮定して、△5三金▲2五歩△1三銀▲2四歩△同銀▲2五桂△4四歩となって、変化図1。

2018-08-28b.png

これに対して、本譜では△4四歩をあえて取らせることで…

▲同 角 △4二玉 ▲7七角 △5三金 ▲2五歩 △1三銀
▲2四歩 △同 銀 ▲2五桂 △4四歩

2018-08-28c.png

変化図1と第2図を比べると、△4二玉の1手が余分に指せていることがわかります。

もっとも、上手はこれで一歩損でしかも歩切れのため、この後かなり綱渡りな受けを強いられます。正直、変化図1と第2図、どちらが良いのかと言われると微妙な気がします。

▲3三桂成 △同 金 ▲1六桂 △3五歩 ▲2五銀 △同 銀
▲同 飛

2018-08-28d.png

このあたりが△4四歩の是非の収束点でしょうか。ここで上手に歩があれば△2三歩で一息つけます。本譜は歩切れのため、上手は文字通りの顔面受けを強いられます。

△3二玉 ▲2一銀 △3一玉 ▲1二銀成 △2三銀 ▲1三成銀
△3二玉 ▲9五角

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この角出はなんなのでしょう。ソフトの検討でも、この手が最善らしいですが…

▲5一角成を防ぐためには持駒の桂を投入するしか無く、桂の投入を強要するという意味しか想像できませんが、実際本譜のように△8四桂と打たれてみるとなんとなくぼやけてしまいますし、いつでも△7六桂と跳ねる機会を手順に与えてしまったのもちょっと気になる。角の働きもイマイチに見えます。私の感覚では感触が良くない手ですけども…

△8四桂 ▲2二歩 △3四銀 ▲2六飛 △1五歩 ▲2一歩成
△4三玉 ▲2二と

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第5図は2一のと金を2二に引いた局面ですが、なぜ▲2二飛成と行かなかったのでしょう? 下手はスピード重視の戦略を選んだのですから、ここも迷わず飛成で突っ込むところだと思いますが…

△5五歩 ▲2三と △同 金 ▲同成銀 △2五歩 ▲3三金
△5四玉 ▲2八飛 △3六歩

2018-08-28g.png

銀取りを無視しての歩の突き出し。上手は既に金損してますが、さらに銀損を甘受しても、と金に望みをつなごうということですか。

駒損を避けようと思えば、この手に変わって△2三銀とするところでしょうが(変化図2)、確かにさらなる駒損は避けられても、上手の左銀は2三というそっぽへ行ってしまった上に質駒となり、さらには下手陣へ攻めのとっかかりも完全になくなってしまいますね。

2018-08-28h.png

これでは下手陣に嫌みの付けようも無いので、△3六歩はやむを得ないところでしょうかね。

このあたりは複雑な局面なようでソフトよっても評価が分かれます。Androidの技巧2は△3六歩を支持しますが、PCの浮かむ瀬は△3六歩をあまり評価せず、△4五銀や△2三銀を推してきます。

時間を稼ぐという戦略に乗っ取るなら、ここはひとまず駒損を避けて△4五銀とする手から考えてみたいですね。

▲3四金 △3七歩成 ▲2五飛 △4七と ▲6六銀 △6四歩
▲1五飛 △1四歩 ▲5五飛 △6三玉 ▲6八玉 △6二銀
▲3三成銀 △7三桂 ▲4三歩

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上手陣はかなり戦力を削られつつも、右翼の銀桂が動き出して、ようやく全軍躍動を果たしたというところですが、さすがにこの戦力差はいかんともしがたいところなはず。

ここで下手のこの垂れ歩が緩手で、形勢を損ねる一因となったもよう。

ソフトによるとここはスピード重視の▲4三金または遊んでいる角を活用する▲8六角が正着らしいです。なお、同じようでも▲4三金を▲4三成銀は、△同金▲同金△5四銀で紛れが生じます。

△6五歩 ▲7七銀 △7五歩 ▲4二歩成 △8五桂

2018-08-28j.png

上手には△6五歩~△8五桂の勝負手があり、そうなると打たされたかたちの8四桂まで光り輝いてきます。なので、第7図の局面では急ぐ必要があったのでしょうね。

▲5二と △7七桂成 ▲同 角 △7六桂 ▲7八玉 △5二金
▲4四金 △5三歩 ▲6五飛 △7四玉 ▲2五飛 △5七と
▲5八歩 △5六と ▲2二飛成 △6六歩 ▲同 角 △同 と
▲同 歩 △6三金 ▲7七歩 △5五銀 ▲2四龍 △5六角
▲6七桂 △6六銀 ▲7六歩 △6七角成 ▲8八玉 △7六歩
▲7八歩 △3四歩 ▲6八歩 △5六馬 ▲3四成銀 △6四金
▲2二龍 △6一歩

2018-08-28k.png

地味なようでもかなり有効な底歩。この歩を打たない後、6二の銀が取られるまで1手ですが、この歩を打つことによって5二龍、6一龍、6二龍と3手が必要になります。下手の攻撃を2手遅らせ、上手は△6一歩の1手を入れているので、差し引き1手をこの底歩で稼いでいる計算になりますか。

▲5二龍 △7五桂 ▲5七桂

2018-08-28l.png

初見ではよくわからない桂打ちでしたが、△6五馬と引かれるとほとんど受けが利かなくなるので、それを受けたということですね。

△7七歩成 ▲同 歩 △8七桂成 ▲同 玉 △8九馬 ▲6一龍
△7五金 ▲7二龍 △7三歩 ▲9五桂 △9九馬 ▲8三龍
△6三玉 ▲9六玉 △8五歩 ▲8七歩 △7七馬
まで145手で上手の勝ち

2018-08-28m.png

投了図。

以下、棋譜です。
 

開始日時:1853/01/27
棋戦:江戸時代の古典棋譜
戦型:その他の戦型
手合割:四枚落ち
下手:柳原長吉
上手:天野宗歩

△6二金    ▲1六歩    △7四歩    ▲1五歩    △3二金    ▲1八飛
△2四歩    ▲1四歩    △2三金    ▲1三歩成  △同 金    ▲2六歩
△1四歩    ▲2八飛    △2三金    ▲3八銀    △2二銀    ▲2七銀
△3四歩    ▲7六歩    △5四歩    ▲3六銀    △3三桂    ▲1七桂
△4四歩    ▲同 角    △4二玉    ▲7七角    △5三金    ▲2五歩
△1三銀    ▲2四歩    △同 銀    ▲2五桂    △4四歩    ▲3三桂成
△同 金    ▲1六桂    △3五歩    ▲2五銀    △同 銀    ▲同 飛
△3二玉    ▲2一銀    △3一玉    ▲1二銀成  △2三銀    ▲1三成銀
△3二玉    ▲9五角    △8四桂    ▲2二歩    △3四銀    ▲2六飛
△1五歩    ▲2一歩成  △4三玉    ▲2二と    △5五歩    ▲2三と
△同 金    ▲同成銀    △2五歩    ▲3三金    △5四玉    ▲2八飛
△3六歩    ▲3四金    △3七歩成  ▲2五飛    △4七と    ▲6六銀
△6四歩    ▲1五飛    △1四歩    ▲5五飛    △6三玉    ▲6八玉
△6二銀    ▲3三成銀  △7三桂    ▲4三歩    △6五歩    ▲7七銀
△7五歩    ▲4二歩成  △8五桂    ▲5二と    △7七桂成  ▲同 角
△7六桂    ▲7八玉    △5二金    ▲4四金    △5三歩    ▲6五飛
△7四玉    ▲2五飛    △5七と    ▲5八歩    △5六と    ▲2二飛成
△6六歩    ▲同 角    △同 と    ▲同 歩    △6三金    ▲7七歩
△5五銀    ▲2四龍    △5六角    ▲6七桂    △6六銀    ▲7六歩
△6七角成  ▲8八玉    △7六歩    ▲7八歩    △3四歩    ▲6八歩
△5六馬    ▲3四成銀  △6四金    ▲2二龍    △6一歩    ▲5二龍
△7五桂    ▲5七桂    △7七歩成  ▲同 歩    △8七桂成  ▲同 玉
△8九馬    ▲6一龍    △7五金    ▲7二龍    △7三歩    ▲9五桂
△9九馬    ▲8三龍    △6三玉    ▲9六玉    △8五歩    ▲8七歩
△7七馬
まで145手で上手の勝ち

 

 

 

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[棋譜並べ]柳原長吉vs天野宗歩(四枚落ち) 1853/01/27」への3件のフィードバック

  1. うけし 2018年8月29日 00:04

    天野宗歩強すぎですね
    変化1図は33桂成同金45桂に同歩と取れない(33角成〜21飛成があるため)から選ばなかったんだと思います

    いいね

    • yamakaz 2018年8月29日 19:40

      >うけしさん
      なるほど、▲4五桂ですか。玉が4二だとこれを△同歩と取って何も起こらないってことなんですね。
      なんという天野宗歩の慧眼…

      いいね

  2. おさけ 2018年8月30日 19:35

    「ゆっくりした流れにして駒得が活きる展開にする」のはある意味正解だと思います。大駒がいない駒落ちなので、飛角を活用する(働きをよくする)ことがこの場合の駒得が活きる展開ということになります。

    上手と下手に棋力差が大きいので仕方ないところですが、本譜24手目で1七桂としていますが、いかにも筋が悪いです。この場合、桂は2九にいた方が働いています。1七桂に代えて1二歩がほぼ決め手みたいなものでしょう。次に1一歩成、同銀、1四香で上手が困っています。金が離れると3三角成です。あるいは香車を走らずに2五歩、同歩、同銀、同桂、1一角成でも突破出来ます。実質的に、と金作りがもう防げません。と金を作ったあとは1二とから2二とと引いて、同金にやはり2五歩、同歩、同銀として同桂と出来ない状態を作り出して棒銀で突っ込んでいくのが比較的分かり易いと思います。相手が歩切れのうちに1四香、同金、1八飛も一応あります。香車を合い駒させて1五歩から取り返して持ち駒にする手段です。

    38手目1六桂は渋滞を作った原因です。打たずに普通に1四香の方がシンプルです。1一香成から1八飛で簡明でした。82手目も温度が高すぎですね。確かに相手陣を溶かす威力があるのですが、高出力レーザーみたいなもので、超局所的かつチャージに時間が掛かり過ぎます。42手目2二歩も同様です。

    50手目9五角は、6五桂を予め緩和しておいた手ではないかと思います。

    今回の下手側は温度の高い手が多いように思えます。ある意味確実なのですが、局所的過ぎました。

    いいね

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