※この棋譜並べシリーズは棋力初段レベルのブログ主が、自身の学習のアウトプットとして書いているものです。解説とかではない旨をご承知の上で、お読みください。
今回取り上げるのは、1853年5月14日の、大橋宗与と天野宗歩の対局です。手合いは宗歩の角落ち。大橋宗与は大橋分家の九代目当主。それでも宗歩相手に平手で指せないのですね…。ちなみに宗与は明治に入ると獄中死し、大橋分家は断絶。最後の当主となってしまった人でもあるようです。
△6二銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲5六歩 △8四歩 ▲7八銀
△6四歩 ▲3六歩 △5三銀 ▲4六歩 △8五歩 ▲7七角
△4二銀上 ▲2六歩 △7二金 ▲6六歩 △6三金 ▲6七銀
△7四金 ▲2五歩 △3二金 ▲7八飛

宗与は最序盤から実に不思議な指し回しを展開。ひたすら歩を突き上げるだけでなかなか飛車を振らず、2筋を突き越して居飛車かと思いきや△3二金を上がらせて飛車を振る。なんか佐藤康光九段を連想してしまいます。
△6五歩 ▲5八金左 △6二飛 ▲6五歩 △同 飛 ▲3七桂

なんともアクロバティックな受け。
それにしても宗与の変則的な指し回しの意図がここに至ってもいまいち見えません。居飛車をちらつかせることで、左金を右側へ活用できないようにする工夫ですかね。どう見ても伸びすぎに見える右辺をどう処置するのか。
△6二飛 ▲4八銀 △6四銀 ▲5七銀 △8四金

善し悪しはよくわかりませんが、感覚的には見習いたい一手。一見そっぽへ行くようでも、歩越しの金を解消して△7四歩から落ち着いて攻めようという手ですね。下手からすぐに先端を開くような手が見当たらないので、ゆっくり体勢を整える余裕はあると見たのでしょうか。
▲6六角 △8二飛 ▲4五歩 △6五歩 ▲7七角 △4一玉
▲4八玉 △7四歩 ▲4六銀 △7五歩 ▲5五歩 △5三銀上
▲4四歩 △7六歩 ▲同 銀 △7二飛 ▲8八角 △4四歩
▲6七銀 △7五金 ▲5四歩 △同 銀 ▲4四角 △5三歩
▲5六銀 △7六歩 ▲5五銀右 △同銀右 ▲5三角成

銀捨てからの強攻。しかも直後に△4三金で馬を殺されるも、金銀との二枚替え。
△4三金 ▲同 馬 △同 銀 ▲5五銀

結果的には角金交換となりましたが、玉形を大きく乱したのでやれるという判断ですかね。上手の持駒に金もありませんし。実際ソフトの評価では+1200ほど下手に振れてます。
△5四歩 ▲4四歩

最近、実戦でこういう歩が打てるようになって、結構勝ちを拾えている気がします。棋譜並べの成果が出ているということでしょうか。
△同 銀 ▲5四銀 △6六角 ▲3八玉 △9九角成 ▲5三歩
△3一玉 ▲4五歩 △5五銀 ▲5二歩成 △8九馬 ▲6二歩

飛車取りを無視して上手の飛車の守備力をそぐ歩打ち。飛車を取られても金銀がある上、上手玉も広くないので勝てるという判断ですね。
△7八馬 ▲4一銀 △2二玉 ▲4二と △1四歩 ▲2四歩
△同 歩 ▲3二銀不成
まで88手で下手の勝ち

ここで宗歩投了。手筋本に出てきそうな腹銀の連続で鮮やかな寄せ切り….
と言いたいところですが!!
なんとこの局面、ソフトの評価では「上手勝勢」です。△5六馬以下、上手の勝ちだと。

△5六馬に対して▲4七金打以外は即詰み(手数はやや長めですが…)。ただ、▲4七金打でも、△4六桂▲2八玉△2七香▲同玉△2九飛▲2八香△4九飛成と進んで…

こうなると持駒の金を使ってしまったので上手玉の詰めろは解けており、逆に下手玉は△3八龍からの詰めろで受けも難しい。
他、投了図の局面では△1二銀のように単純に詰めろを受けるような手でも上手が良い、という評価です。
では宗与のミスはどこだったのか…
…あらためてよく見ると、第7図直後の81手目の以下の局面…

これ、△4二とから簡単な5手詰じゃあーりませんか
酷い、これが見えない宗与も、俺自身もちょっと酷すぎる orz。宗歩はどうなんだ?この詰みは見えていたのか? 見えていて舐めプしたのか? 忖度したのか?
色々モヤモヤが残る棋譜です…
以下、棋譜です。
開始日時:1853/05/14
棋戦:江戸時代の古典棋譜
戦型:その他の戦型
手合割:角落ち
下手:大橋宗与
上手:天野宗歩
△6二銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲5六歩 △8四歩 ▲7八銀
△6四歩 ▲3六歩 △5三銀 ▲4六歩 △8五歩 ▲7七角
△4二銀上 ▲2六歩 △7二金 ▲6六歩 △6三金 ▲6七銀
△7四金 ▲2五歩 △3二金 ▲7八飛 △6五歩 ▲5八金左
△6二飛 ▲6五歩 △同 飛 ▲3七桂 △6二飛 ▲4八銀
△6四銀 ▲5七銀 △8四金 ▲6六角 △8二飛 ▲4五歩
△6五歩 ▲7七角 △4一玉 ▲4八玉 △7四歩 ▲4六銀
△7五歩 ▲5五歩 △5三銀上 ▲4四歩 △7六歩 ▲同 銀
△7二飛 ▲8八角 △4四歩 ▲6七銀 △7五金 ▲5四歩
△同 銀 ▲4四角 △5三歩 ▲5六銀 △7六歩 ▲5五銀右
△同銀右 ▲5三角成 △4三金 ▲同 馬 △同 銀 ▲5五銀
△5四歩 ▲4四歩 △同 銀 ▲5四銀 △6六角 ▲3八玉
△9九角成 ▲5三歩 △3一玉 ▲4五歩 △5五銀 ▲5二歩成
△8九馬 ▲6二歩 △7八馬 ▲4一銀 △2二玉 ▲4二と
△1四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲3二銀不成
まで88手で下手の勝ち
こんな古い棋譜を並べてるとは凄いですね!
現代将棋とはまた違った趣があって面白いですね、じっくり位を取って圧力をかけようとするのかなあ?
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棋譜を並べるなら天野宗歩!
と言う向きが結構多いので、乗ってみようかと。
割と分かりやすい棋譜が多くて、確かにプロの将棋を無解説で並べるよりは勉強になりそうです。
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